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壊れたサックス

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byトミー富田

NYのストリートパフォーマンスは、4th Street,14th Street,34th Street,42nd Street,そして57th Street等に関しては、年に一回オーディションがあり、NY PortAuthorityの許可が必要です。上手な人、下手な人、誰でも勝手に演られては、時としてそれは雑音になってしまうので、主要なホームのパフォーマーにはオーディションが必要なのです。

ここ数年、このストリートパフォーマーの中から、YAZBANDという日本人サックスプレイヤーが注目されています。私の友人である日本人ドラムスにキーボード、サックスの編成で、主に50th Street&Lexinghton Ave. の4,5,6番ラインから、D,Fラインのホームに抜ける人通りの多い所で演奏をしながら自主制作のCDを販売しているのですが、これが馬鹿にならない売れ行きだそうです。

とはいえ、実際、無許可で勝手に演っている人達が沢山いるのも事実・・。
今、私が最も注目しているパフォーマーは、地下鉄のCトレインを寝グラにしている40歳前後の黒人サックスプレイヤーです。
彼は突然、車両内に現われては、「レディース エーンド ジェントルマン!私は皆さんの為に素晴らしい演奏をお聞かせします。・・・しかし、実は数日前に事故に遭い、愛用のサックスがこの様に壊れてしまいました。でも、今日は心をこめて演奏します。」と前口上をして、いきなり壊れたサックスを吹き始めるんです。

キーキーピーピー・・・、とても音楽にならない凄い音で、走行中の密室の車両内から思わず「止めてくれぇぇ!」と逃げ出したくなります。

乗り合わせた3~4人の黒人のグループがそれを見て笑い転げ、「頼むからやめてくれ!」とお金を差し出しました。
私も耐え切れずお金を差し出しました。
そうすると彼は、「有難う!今度きちんとサックスを直して、次回は素晴らしい演奏を聞かせます!」と次の車両に移っていくのです。
彼が去った後、先程の黒人達が、「いつもあの調子で廻って来るんだよな」と言ってまた笑い転げていました。

今度壊れたサックスを持って彼が廻ってきたら、是非その真剣な彼の演奏に耳をふさいでください。

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by tommytomita | 2006-08-30 00:03 | ニューヨーク情報
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